災害時の帰宅困難者対策:オフィス周辺の一時滞在施設と安全な待機方法
はじめに
大規模な災害が発生した場合、交通機関の停止や道路の閉鎖により、多くのビジネスパーソンが勤務先から自宅へ帰ることが困難になる「帰宅困難者」となる可能性があります。オフィス周辺の地理に不慣れな方や、災害時の具体的な対応について不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この状況下で無理に移動を開始することは、二次災害に巻き込まれる危険性を高めるだけでなく、救援活動の妨げになることもあります。本記事では、災害発生時にオフィスで帰宅困難者となった場合の基本的な考え方、一時滞在施設の利用方法、そして安全に待機し、帰宅を開始するための具体的なポイントについて解説します。
災害時に「帰宅困難者」となる可能性とそのリスク
地震や風水害など大規模な災害が発生すると、電車やバスといった公共交通機関が停止し、道路も寸断されることがあります。これにより、職場から自宅まで移動することができなくなる人が多数発生し、これを「帰宅困難者」と呼びます。
無理な移動がもたらすリスク:
- 二次災害への遭遇: 建物からの落下物、火災、路面の損傷など、余震や火災の延焼による新たな危険にさらされる可能性があります。
- 負傷・疲労の増大: 長時間の徒歩移動は体力を消耗し、特に水や食料が不足している状況では健康を害するリスクがあります。
- 情報不足による不安: 最新の交通情報や避難情報が得られず、不安な状況が続く可能性があります。
- 救助活動の妨げ: 大勢の人が一斉に路上にあふれることで、緊急車両の通行が妨げられ、人命救助や物資輸送の遅延を招くことがあります。
このようなリスクを避けるため、政府や自治体は災害発生時に「一斉帰宅の抑制」を呼びかけています。
オフィスでの待機と一時滞在施設の利用判断
災害発生時、オフィスにいる場合はまず、安全が確保されたオフィス内で待機することが原則です。しかし、状況によってはオフィスでの待機が困難であったり、より安全な場所へ移動する必要が生じたりすることもあります。
オフィスでの待機が原則
多くの企業では、従業員が災害発生時に安全に待機できるよう、オフィス内に食料、飲料水、簡易トイレなどの備蓄品を用意しています。また、安全なスペースや情報収集体制が整えられているはずです。まずは会社の指示に従い、オフィス内で待機しましょう。
一時滞在施設とは
一時滞在施設とは、災害発生時に帰宅困難者が一時的に滞在し、安全を確保できる場所として、国や自治体が指定した施設のことです。主に公共施設(学校の体育館や公民館など)や、事業者との協定によって提供される商業施設などが含まれます。これらの施設では、水や食料、トイレなどが提供されることもあります。
利用を検討するタイミング
一時滞在施設の利用を検討するのは、以下のような状況が想定されます。
- オフィスが安全でない場合: オフィスの建物自体が損壊し、安全な待機場所として機能しない場合。
- 長期間の待機が予想される場合: 交通機関の復旧に時間がかかると判断され、数日間の待機が必要となる場合。
- 会社の指示があった場合: 会社が周辺の一時滞在施設への移動を指示した場合。
一時滞在施設の探し方と利用時の注意点
一時滞在施設は、事前に場所を把握しておくことが非常に重要です。
会社の避難計画で確認する
あなたの会社が策定している災害時の避難計画には、通常、災害発生時に利用できる一時滞在施設や、指定避難所の情報が明記されています。オフィスの壁などに掲示されている避難経路図や、会社から配布される防災マニュアルで確認しましょう。 「会社の避難計画図で確認しましょう」という情報に加え、「〇〇(例:最寄りの一時滞在施設)は地図で位置を確認しておくと安心です」のように、具体的な場所を地図で確認することの重要性を意識してください。
国や自治体が提供する情報を活用する
- 帰宅困難者支援マップ: 各自治体では、災害時に開設される一時滞在施設や災害拠点病院、給水拠点などを地図上に示した「帰宅困難者支援マップ」を公開している場合があります。スマートフォンのアプリやウェブサイトで確認できるよう、事前にブックマークしておくと良いでしょう。
- 防災アプリ・ウェブサイト: 各自治体の防災アプリや、気象庁などのウェブサイトでは、最新の災害情報や避難情報を入手できます。
利用時の注意点
- 混雑: 大規模災害時は、多くの方が一時滞在施設に殺到し、非常に混雑することが予想されます。
- 提供物資: 提供される物資には限りがあります。個人で用意した防災グッズ(食料、飲料水、常備薬など)を携行することが望ましいです。
- マナー: 共同生活の場となるため、他の利用者への配慮を忘れず、施設のルールに従って行動しましょう。
安全な帰宅開始の判断と準備
一時滞在施設での待機を経て、いよいよ帰宅を開始する際には、冷静な判断と準備が不可欠です。
帰宅開始の判断基準
- 交通機関の運行情報: 公共交通機関が運行を再開したことを確認し、無理のない範囲で利用しましょう。信頼できる情報源(鉄道会社の公式ウェブサイト、駅のアナウンスなど)で最新情報を入手することが重要です。
- 道路状況の確認: 徒歩での帰宅を検討する場合でも、道路の状況(通行止め、損傷箇所など)を事前に確認し、安全なルートを選びましょう。
- 体調: 無理をして移動を開始せず、体調が優れない場合は引き続き安全な場所で待機することを検討してください。
帰宅時の準備
- 情報収集: 最新の災害情報、交通情報、天候情報を常に確認し、安全なルートや時間を判断します。
- 携行品: 水分補給のための飲料水、非常食、歩きやすい靴、モバイルバッテリー、懐中電灯など、最低限の防災グッズを携行しましょう。
- 家族への連絡: 帰宅を開始する前に、家族や大切な人へ連絡を取り、安否を伝えましょう。
- 災害用伝言ダイヤル(171): 音声で安否を伝えることができます。
- 災害用伝言板(Web171): インターネットを通じて文字で安否情報を登録・確認できます。
- 携帯電話会社が提供する災害用伝言板サービスもあります。
まとめ
災害時にオフィスで帰宅困難者となった場合、まず大切なのは「あわてずに、安全な場所で待機する」ことです。会社の指示に従い、オフィスでの待機が難しい場合は、一時滞在施設の利用を検討しましょう。
そのためには、普段から会社の避難計画や、オフィス周辺の一時滞在施設の場所を把握しておくことが重要です。地図で位置を確認し、いざという時の行動をイメージしておくことで、災害発生時も落ち着いて行動することができます。
日頃からの備えと正確な情報収集が、あなた自身の安全、そして周囲の人々の安全を守ることに繋がります。